川崎医療福祉大学
2006 年 55 巻 7 号 p. 12-21
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『我身にたどる姫君」は、女帝の統治・今上帝の善政描写に特徴がある。それは机上の空論と見るべきではなく、鎌倉初期の九条兼実が実際に取り組んだ政策に一致する点が多いことが指摘できる。院近臣を排除し、天皇家を中心にその外戚たる藤氏摂関家がそれを補佐するという、兼実・慈円兄弟が理想とした御代を物語は実現しているのである。そこには、保元の乱以降、天皇家も摂関家も武家勢力によって分断された「危機の時代」を生きる物語作者の切なる執筆動機が読み取れる。
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