日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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竹むきが記 : 三大危機の只中に立って(<特集>中世・危機と「文学」)
岩佐 美代子
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2006 年 55 巻 7 号 p. 33-42

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抄録

西園寺公宗の宝、日野名子の日記「竹むきが記」は、皇統・公家社会・婚姻形態にかかわる三つの危機を乗越え、これに鍛えられた女性によって書かれた作品である。困難きわまる時代の中で、夫を失い、その家に乗込んで遺児を育て上げ、家門を守った彼女は、同時に自らの判断で信仰の道を定め、在俗修行に徹する。中世までの自立性高い女性と、近世の夫に従属し家を守る女性の分岐点に立つ本記は、危機を描く文学として価値高いものである。新たな見直しを期待したい。

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© 2006 日本文学協会
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