2007 年 56 巻 1 号 p. 2-10
ナショナリズムの基盤には、同一言語、文化、土地、血縁などをベースにした共感の共同性がある。外的圧力などをきっかけにそれが刺激されると支配層のみならず一般の人々を巻き込んで強い反撥をもたらすことがある。その仕組みを<起源>にさかのぼって古事記・日本書紀の読解をとおして考えてみた。結論としては、古代王権が伊勢神宮の祭祀を行うことで始祖神の観念を確立し、始祖の不死をめぐって共同体との間で合意づくりをした。その合意(ネーション)形成のプロセスにナショナリズムの<起源>をみた。