日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
言葉を奪われた動物 : 大江健三郎「飼育」をめぐる江藤・三島の批評の問題点
村上 克尚
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 59 巻 6 号 p. 34-43

詳細
抄録
本稿は、大江健三郎の「飼育」を、動物として殺される黒人兵の側から読み直す試みである。江藤淳は、近代主義の立場から、主体になれないものの排除を正当化し、三島由紀夫は、反近代主義の立場から、動物の死の瞬間に存在の連続性の開示を見て取ろうとした。しかし、「飼育」の内在的な読解から導出される反復と境界攬乱の主題は、共通の言葉を持たないもの、不在のものとの関係の重要性を提起する。この主題の捉え損ねは、六〇年代の江藤・三島の言説への批判的視座を提供するものである。
著者関連情報
© 2010 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top