日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
特集・領域の横断と展開――近世文芸を「仕分け」る――
西鶴に束になってかかるには
木越 俊介
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2012 年 61 巻 10 号 p. 12-23

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抄録

この十年、西鶴研究は、各研究者の論文集の刊行のみならず、さまざまな形で西鶴の面白さを伝えようと外への発信を強めてきた。この動きをさらに活性化させるためには、西鶴を専門とする者以外も、これに呼応していくことが望ましい。ただし、西鶴作品には独特の難しさがあるのも事実であり、また従来の研究史の厚さもなみなみならぬものがある。そうしたなかで、生産的な形で西鶴研究に資するにはどのような方向性があるのかを、筆者なりに模索してみた。その過程で、西鶴の典拠研究の考え方や用語を整理した結果、古典類を典拠とする趣向については、落ち穂拾いが可能なのではないかと考え、『武家義理物語』の一話を例に試論を提示した。西鶴に限らず、近世文学にはまだまだ「束になってかかるべき」対象があり、各研究分野における問題意識を共有するためには、研究の現況を外に開いていくこと、そして他分野の研究者が自身の流儀を応用・適用しながらそれに応える努力をしていくことが、細分化されたと言われて久しい研究状況の突破口になると思われる。こうした地道な積み重ねが、学生や近世文学に興味を持つ一般の方に、近世文学の魅力をより広く伝えていくことに結実していくのではないだろうか。

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© 2012 日本文学協会
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