日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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古事記における「出雲」とシャーマニズム
—— ホムチワケの出雲訪問の考察を通して ——
アンダソヴァ マラル
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2012 年 61 巻 2 号 p. 1-13

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抄録

本論では古事記中巻におけるホムチワケの出雲訪問に注目した。ホムチワケは「出雲の大神」の祟りを鎮めるために、出雲に派遣される。そこでキヒサツミによって「大御食」を献上されるが、それは「出雲の大神」への祭祀を描いているのである。

こうした祭祀は大和の天皇と関わっており、天皇の支配を語る中巻の構造において、「出雲」は「中心」に対する辺境の一地域に過ぎない。

だが、ホムチワケの「体験」に注目することで、それとは別の「出雲」を見ることができる。ホムチワケにとって「出雲」はイニシエーションをもたらす根源的な「他界」という意味を持っている。

ホムチワケの出雲訪問の中で構造の中に解消できない、シャーマニックな「体験」を見ることができるのである。

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