2012 年 61 巻 7 号 p. 22-32
『新続古今和歌集』(略称『新続古今集』)の序の冒頭は、『千載和歌集』(略称『千載集』)の序を踏まえて書かれている。ただ、語句を踏まえていても、『新続古今集』には宋学の思想が認められ、叙述の根底に現れる考え方には違いがある。『千載集』序に現れる、三国伝来の仏教を意識することで和歌を我が国のものと認識するという考え方は、後代の勅撰和歌集序には受け継がれていない。和歌によって政が理想的に治まるという政教的な思想を基本とする勅撰和歌集序においては、そのような考え方が積極的に受容されなかったからであろう。ここに、勅撰和歌集序という文章の制度の根幹にある論理の規範が浮かび上がるのである。