日本文学
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特集・教科書と文学
何を読むのか
――教科書の古典「文学」――
竹村 信治
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2014 年 63 巻 1 号 p. 2-17

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抄録

「学習指導要領」への準拠が求められる教科書だが、実際の教科書編集にはこれへの「参与」と「補完」が認められる。「学習指導要領」は、今後はともかく、現在はM・マクルーハンのいわゆる「クールなメディア」としてあると見なし、教科書の古典「文学」をめぐる「参与」と「補完」の可能性について考察した。

この度の改訂で小中高校「国語」に新設された〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕だが、小学校「国語科」教科書は「伝統的な言語文化」を「言語文化」とあえて読み替えたごとくで、拡張された「言語文化」概念のなかに古典「文学」を位置づけなおして教材の拡充を果たしている。これが二七年度版でどう改訂されるかは不明だが、この新設事項へ「参与」「補完」は教科書の可能性を開いたものとして相応の評価に値する。

そうした小学校教科書の達成を承けて中等学校においてはいかなる「参与」「補完」を構想するのか。教科書およびそれを扱う教員の構想力、展開力が問われるところである。本稿では四つの対処法を示した。その要所は、「言語文化」事象としてある古典「文学」テキストの一つ一つを「知のアーカイブズ」と捉え返し、それぞれの「知の営み」を読み解き「評価」「批評」すること。それこそが「ホット」に進行しつつある現況に「クール」に立ち向かう途だろうとした。

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