多言語・多文化社会では,異文化接触場面によりさまざまな心理的変容が起こり,そうした変容は共生のための学習と捉え得る。本稿では,接触場面でのコミュニケーションで行われる異なる意識的配慮に焦点を当て,意識的配慮がどのような要因で学習されるかを明らかにすることを試みる。アジア系留学生150名を対象に質問紙調査を行い,因子分析によって共生的学習に関わる要因と意識的配慮を特定し,次に,パス解析によって共生的学習の過程を考察した。その結果,意識的配慮の学習には自他の行動に関する信念が複雑に関与していること,その信念には日本での留学生活の質や日本人の態度などが影響を与えていることが明らかになった。