日本語教育
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研究論文
引用表現「~と言ってくる」の語用論的考察
山本 真理
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2011 年 148 巻 p. 99-113

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抄録

 本稿では「~が『~』と言ってくる」という同じ構造をもち,引用句だけが異なる次のような例を扱う。次の例はいずれも「言ってくる」を使用し,引用句のみが異なる文であるが,自然さには違いがある。しかし,「言う」や「(テ)クル」の先行研究からだけではその違いを説明できない。

  ○ 先生が「ちょっと手伝ってくれない」と言ってきた。

  ? 先生が「富士山は日本で一番高い」と言ってきた。

 本稿では,これらの自然さの違いを語用論的観点から分析した。その結果,「言う」が持つ性質の「発語行為を表現することはあっても,発語内行為を示すことはない」こととは異なる性質が「言ってくる」の使用に観察された。本稿ではその性質を「策動性」と呼び,その発話の結果である「聞き手への効果まで意図しているという発話の性質」と定義した。また,「言ってくる」で示される「策動性」は伝達者の表現意図であることについても述べた。

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© 2011 公益社団法人 日本語教育学会
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