日本語教育
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寄稿論文
「心理」分野
―『日本語教育』50年の軌跡と今後への展望―
横山 紀子
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2012 年 153 巻 p. 40-54

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抄録

 『日本語教育』第1号から第151号に掲載された「心理」分野の論文について,その軌跡を振り返った。第Ⅰ期(1962年~1985年)には,「心理」分野の研究と考えられるものがほとんどない中で,後の発展の種子と思われる論考が出現していたのが印象深い。第Ⅱ期(1985年~1999年)には,中間言語研究が登場し,日本語教育研究の力点が「教授から学習へ」と移行すると同時に,ストラテジー,学習スタイル,学習動機など,学習過程に注目した研究が急速に増えた。第Ⅲ期(1999年~2012年)には,理論の導入により普遍性を追求するとともに,理論を検証することによって教育実践に還元しようとする研究が存在感を増してきた。「心理」分野の研究は,一貫して,言語教育とは言語知識の注入ではなく,学習者が持てるものを生かして学べるような学習支援をしていくことだという認識を高めることに貢献してきたと考えられる。

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© 2012 公益社団法人 日本語教育学会
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