本稿では,日本生まれ・育ちの日本語を第二言語とする(以下,JSL)子どもの中にも,日本語モノリンガル(以下,Mono)にとっては“簡単な”和語動詞が十分に使いこなせていない子どもがいることを指摘した西川他(2015)の報告に,JSL・Mono各グループ内の学年間の語彙力の違いに関する検証を加える。研究1では,小2~中1のJSL163名とMono1,333名について,合計得点の変化を量的に分析し,JSL・Mono共に概ね学年とともに得点が上昇するが,JSLはMonoに追いついてはいないことを明らかにした。研究2では,Mono幼稚園児60名のデータも加え,各アイテムの正答率の変化を検証した。JSL・Mono共に,自身の経験が乏しい動作に対応した動詞・用法が苦手だが,JSLの場合は,経験に伴う自身の経験の蓄積が,Monoのようには日本語語彙の習得には結びついていない例があることを明らかにした。