2022 年 183 巻 p. 1-17
本研究では,東南アジアの大学で教える日本語母語話者教師(NT)と非母語話者教師(NNT)間での日本語ナラティブ作文評価で重視する項目を比較分析する。3つのトレイト【内容】【構成】【日本語】⑴に属する15評価項目の重視度を比較し,「困難/大変だったこと」「忘れられない出来事」をテーマとする作文各6編に対する順位付け評価と上位作文の決め手に関する自由記述を質的に分析した。その結果,NT・NNTともに【内容】の重視度が高いが,【構成】と【日本語】については,複数の項目でNNTによる重視度がより高く,NNTが全体的に多くの評価項目を重視していた。実際の作文評価では,NT・NNTともに両テーマで[興味深さ]と[正確さ],「困難/大変だったこと」で[課題達成],「忘れられない出来事」で[出来事の描写]を上位作文の決め手にしていた。一方,NTのみ,NNTのみが重視する評価項目も見られた。