フランスで戦後に行われた国内観光政策は、実施主体の漸進的な多様化、三つの分野への適用、三つの時期が特徴となっている。すなわち第一の特徴は観光政策の実施主体が国以外に、州や県、コミューヌ、さらにはEUにまで拡大したことであり、第二の特徴は観光政策の適用分野が主として国土整備分野、規制分野、ソーシャル・ツーリズム分野の三種類に分類できることである。第三の特徴は大規模観光開発が行われた1960年代まで、環境と観光の折り合いが求められた1970年代から1980年代にかけて、そして地方分権化に伴って観光に関する権限が州や県、コミューヌにまでおろされた1980年代以降という三つの時期が区別されることである。このような政策の進展の中でフランスの国内観光はトップダウン型から地元の利害調整型へ、大規模開発から環境重視の持続可能な開発へと変化してきた。