日本近代文学
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論文
戦争テクノロジーとしての「防空」空間と文学
――虚空/地上を繋ぐ感覚と視線のネットワーク――
副田 賢二
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2019 年 101 巻 p. 219-234

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抄録

「航空」のイメージはWWⅠ以降頻繁に消費され、『サンデー毎日』や文学テクストにも多様に描かれるが、一九二〇年代後半以降そこに「防空」というフレームが浮上する。国民の意識と身体を軍事に関与させる「国民防空」は、地上から隔絶した「航空」を地上との関係空間として新たにイメージ化させる場であった。そこでは「国土」が虚空/地上をめぐる感覚のネットワークにおいて再編制され、「国民」の共同性が立ち上がる。その想像力は、海野十三のテクストや細野雲外『不滅の墳墓』に発動している。更に「防空」空間では、可視/不可視をめぐる想像力が文学と融合する。空襲下を描いたテクストには、「防空」空間の破綻の中を生きる地上的身体の様相が描き出されていた。

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