日本近代文学
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論文
十五年戦争下の〈文学館運動〉
――「文芸懇話会」と「遊就館」、そして島崎藤村――
大木 志門
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2015 年 92 巻 p. 77-92

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抄録

本論は、「文学館」をめぐる歴史研究の試みである。一般に「文学館」の歴史は戦後の「日本近代文学館」設立(一九六二年)に始まるとされるが、実は戦前にも文壇をあげた「文学館運動」の萌芽が存在した。昭和九(一九三四)年に組織された「文芸懇話会」最初の事業「物故文芸家遺品展覧会」と併せて提起された「文芸記念館」構想がそれであり、主唱者である島崎藤村は文芸統制を利用して近代文学資料の保管施設を作ろうとしたのである。藤村が着想を得たのは昭和七(一九三二)年に新装された靖国神社「遊就館」からであり、この事業を菊池寛と「文芸家協会」が継承し昭和一四(一九三九)年に「文芸会館」を建てたが、それは当初の計画とは外れたものであった。しかし藤村の執念は昭和二二(一九四七)年開館の「藤村記念館」を生み、これが戦後の文学館運動を準備したと考えられる。

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