日本近代文学
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論文
木下杢太郎「硝子問屋」の情調表現
――主客融合と無意識――
権藤 愛順
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2016 年 94 巻 p. 17-30

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抄録

明治期の木下杢太郎が、情調を喚起させる表現を重視していたことはよく知られている。しかし、これまで、杢太郎の試みた情調表現は極めて表層的なものであると考えられてきた。本稿は、明治三八年を始点とするわが国におけるStimmungというドイツ美学の受容の様相を明らかにし、杢太郎における情調表現の本質が深層の心理と関係するものであることを考察している。杢太郎の情調表現を評価したのが夏目漱石であった。本稿では、杢太郎の情調表現の意義を認めた漱石の背後にある思想性を分析し、従来あまり言及されることのなかった漱石と杢太郎の思想的接点も明らかにしている。さらに、Stimmungという概念が受容された結果、明治四〇年代の文壇において、無意識を表現することへの関心が広がりをみせていることも明らかにしている。

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