日本近代文学
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論文
岡本かの子「花は勁し」論
――空間に生起するもの――
野田 直恵
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2016 年 95 巻 p. 33-48

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抄録

明治時代、西洋の象徴主義は仏教を介して日本人に受容された。岡本かの子はこうした時代に、「生命は体験を通して、象徴的手法で、具体化出来る」という創作指針を見出した。だから、この作品に示された「椽先」は世界の縮図となっている。椽先には花などが置かれ、それらを強い光が照らし出す。そして、この「シーン」が幻想詩派たちを喜ばせると主人公は語る。このシーンが「法華経」に拠ったものだからである。豊かな比喩によって生命の実態を説くのが「法華経」である。この作品を読む幻想詩派たちはこのシーンに象徴される普遍的な生のあり方をやがて見出す。かの子は幻想詩派の視点で仏教的比喩を用い、生命の姿を示したのである。

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