日本近代文学
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論文
「堕落」と「運命」
――坂口安吾「堕落論」と保田與重郎的「デカダンス」の関係をめぐって――
福岡 弘彬
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2018 年 98 巻 p. 210-225

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抄録

「堕落論」(「新潮」昭21・4)における「堕落」の概念と、保田與重郎が戦中に唱えた「デカダンス」との関係性を考察した。「歴史」や「運命」に抗いつつも、空襲の圧倒的な「美」の記憶に取り憑かれている「堕落論」の「私」は、その記憶の中心で、「堕落」という言葉を手繰り寄せている。この「堕落」とは、保田與重郎が戦時中に唱えた「デカダンスの美学――死に逝く者たちの姿の美しさを抽出し、「運命」を自然化した美学――との葛藤・抗争の果てにもぎ取られた概念であった。また、「私」が「堕落」の可能性を抱え込むことで、過去の自身が囚われていた「運命」や「美」を否認するという点において、「堕落論」が戦中―戦後を跨ぐ自己を行為遂行的(パフォーマティブ)に構成する作品であることを明らめた。

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