日本考古学
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公州丹芝里横穴墓群発掘調査概要
池 ミン周
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2005 年 12 巻 19 号 p. 115-127

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抄録

朝鮮半島の公州丹芝里横穴墓遺跡では,23基の横穴墓が群集して発見された。残存状態が非常に良好で構造が明確であり,副葬遺物と被葬者の人骨などが完全に残っている。これは朝鮮半島の横穴墓の構造的特徴と築造時期はもちろん,日本考古学界でこれまで模索されてきた日本列島の横穴墓の起源問題をはじめとする古代韓日関係研究に画期的な資料となる。
横穴墓の築造時期は副葬された土器類の型式的特徴を通して大まかな年代幅を把握することができるが,蓋杯や三足器などの遺物型式をみると,横穴墓はおよそ百済熊津期前半(5世紀後半)にわたって造営されたものと把握される。
一方,公州丹芝里横穴墓の構造的特徴は日本列島の初期横穴墓である福岡県行橋市竹並・大分県上ノ原などの北部九州一円に集中して分布している横穴墓と類似する。その時期は5世紀後半~6世紀前半頃とされており,今まで知られる日本列島の横穴墓の中では朝鮮半島系遺物が副葬される例が少なくない。このような事実はこれまでベールに包まれていた日本列島の横穴墓の起源問題を解明することができる極めて重要な資料となり,今回の丹芝里横穴墓群の存在とともに,横穴墓の百済地域起源の可能性を積極的に検討する契機となるものである。

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