日本考古学
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古墳時代後期における物資と情報の分配
金銅装馬具の流通と畿内型石室構築技術の伝達の検討を通して
太田 宏明
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2006 年 13 巻 22 号 p. 127-145

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抄録

本稿は,物資や情報が分配される状況を分析することで,古墳時代後期における畿内政権と地域社会の関係を明らかにすることを目的としている。このために,古墳時代後期の畿内政権が管理と流通を掌握していた可能性が指摘されている金銅装馬具と畿内型石室構築技術を採り上げ,分析を行なった。
資料を分析する際には,まず物資と情報の送り手である政権を構成した支配者層の墳墓を採り上げた。そして,支配者層の墳墓で採用された金銅装馬具や畿内型石室が一定の期間をおいて新しい意匠や構造に変化している点に注目した。意匠と構造の変化を把握することで,各時期において支配者層が標準的に採用している金銅装馬具と畿内型石室を抽出した。その後,物資や情報の受け手である地域首長層や群集墳被葬者層の墳墓から出土した金銅装馬具と埋葬施設の変化を整理して,支配者層でみられた状況と相互比較した。比較の結果,支配者層で標準的に採用されているものと同時期に,同意匠・同構造の金銅装馬具と埋葬施設を保有できた古墳の被葬者は,中央の物資や情報を円滑な流通のもと入手できる立場にいた人物と評価した。そして,このような古墳が,地理的・階層的にどのような勾配をもって分布しているのか検討を行なった。そして,このような古墳が密に分布する地域は,畿内政権と強く紐帯していた地域として評価した。

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