日本考古学
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埋蔵文化財センターにおける情報デジタル化に関する個人アンケート調査報告
日本情報考古学白書第二幕
杉本 豪五十嵐 彰
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2007 年 14 巻 24 号 p. 107-122

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抄録

日本では,これまで埋蔵文化財調査組織が実施した数多くの発掘調査によって,膨大な量の考古資料が蓄積されている。一方,記録保存と称して得られたこうした各種の考古記録に関する情報がどこでどの程度作成され利用・公開されているのか,あるいは誰がそれらを管理・保存し,一般市民はどの程度利用可能なのかといった点については,ほとんど明らかにされていない。本調査は,こうした点を明らかにするために,日本における初の試みとして全国の埋蔵文化財センターを対象とした考古情報に関する実態調査を行なった。調査プロジェクトは,ウェブ内容調査(オンライン),個人および組織アンケート調査(オフライン)の三部から構成される。本論は,本プロジェクトの第二部に相当する個人用調査の結果である。調査は,全国の埋蔵文化財センターおよび相当組織(総計140組織)宛にアンケート用紙を添付した電子メールを送付する方法をとった。同時にアンケート調査専用のウェブサイトを立ち上げ,誰でも自由にアンケート用紙をダウンロードして回答できるようにした。その結果,埋蔵文化財行政における情報蓄積の在り方,その利用や公開の形態,調査員の情報化に対する意識や態度に関して詳細な実態が明らかになった。問題はアンケートの回収率が低く,全国統計までには至らなかった点である。本調査に先行して行なったウェブ調査の結果を比較・検討することによって,日本考古学における情報整備のための基礎的な資料が得られたと考える。さらに情報の精度を高めるためにも,改めて全国的な再調査の必要性を考えている。今後はサンプル・データの偏りを解消すること,博物館学など周辺関連分野における状況との比較検討も必要となる。また欧米で発展しているコンピュータ・情報考古学との関連から,日本考古学の国際的位置を確認することは,緊急の課題である。単に受動的な調査に収束するのではなく,現在の日本考古学の現状を正確に把握して世界の考古学研究と密接に関連し合いながら,現状の問題解決や将来的発展のために能動的な活動を行なうことが必要である。

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