日本考古学
Online ISSN : 1883-7026
Print ISSN : 1340-8488
ISSN-L : 1340-8488
箆状石器の機能について
高橋 哲
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 14 巻 24 号 p. 41-50

詳細
抄録

箆状石器という東北地方に分布する石器を取り上げ,その機能を明らかにすることに努めた。箆状石器は形態から命名された石器器種であり,その機能は,土掘り具,あるいは皮加工道具として従来考えられてきた。近年箆状石器の使用痕分析が蓄積され,その機能の一つに皮加工の道具として認識されるようになった。箆状石器の出土する遺跡では掻器が共伴しており,掻器にもやはり皮加工を示す使用痕が確認されている。
本稿では,箆状石器と掻器を顕微鏡で詳細に観察した分析事例を検討した。その結果,箆状石器と掻器は,同じ皮加工道具でありながら操作方法において異なっていることが明らかになった。掻器は刃部を立てたスクレイピソグの操作方法であるのに対して,箆状石器は刃部を寝かして削りとるホイットリングの操作方法である。
箆状石器が縄文時代早期に出現することから,縄文文化の初期段階に,皮加工の道具が少なくとも2種類存在し,皮加工の目的に応じて使い分けていた可能性が非常に高いと考えられる。

著者関連情報
© 有限責任中間法人日本考古学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top