日本考古学
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縄文時代の子供の埋葬
山田 康弘
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1997 年 4 巻 4 号 p. 1-39

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抄録

本稿は縄文時代の子供の埋葬例を集成・検討することによって,当時の人々の生活史の一端を明らかにすることを目的としたものである。
まず,初めに集成した子供の埋葬例を年齢段階順に新生児期・乳児期・幼児期・小児期・思春期の5段階に区分し,埋葬形態を施設・単独葬か合葬か・合葬の場合の相手の性別・単葬か複葬かというように分類したうえで,各地域・時期別にそれぞれの埋葬形態を把握した。その結果,子供の埋葬形態は,大人のそれと同じように単独単葬例が最も多く,土器棺葬例は幼児期以前に,多数合葬例は幼児期以降に多いという傾向性が明らかになった。
また,埋葬時に付加された様々な属性,埋葬姿勢・位置・赤色顔料の散布・土器棺内の人骨の週齢・合葬人骨の性別・装身具の着用などを検討し,次の点を指摘した。埋葬姿勢は大人とあまり変わらない。埋葬位置は住居跡に絡んで検出される場合が多い。赤色顔料の散布は新生児期からされるが,地域性がある。土器棺内から出土した新生児期の人骨は週齢38週以上のものが多く,新生児早期死亡例と考えられる。また,土壙などに埋葬されたものは38週以下のものが多い。大人と子供の合葬例では,乳児期以前は女性と合葬されることが多く,幼児期以降には男性と合葬されるようにもなる。これは子供の行動範囲が幼児期を境に変化したことを意味する。装身具の本格的な着用は幼児期以降に行なわれるが,玉類・貝輪を中心とした首飾りや腕飾りに限られ,頭飾りや腰飾りなどは存在しない。これは装身具の着用原理が大人と子供で異なっていたためと考えられる。
次に大人と子供の埋葬例が検出された6遺跡の事例を検討し,埋葬時に付加された属性の差異について具体的に明らかにした。
これらの諸点を総合して,当時の子供の立場が年齢によって変化することを述べ,子供が大人になるまでの生活史モデルを提示した。

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