日本考古学
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縄文時代におけるオオツタノハガイ製貝輪の製作地と加工法
伊豆大島下高洞遺跡D地区検出資料からの検討
忍澤 成視
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2001 年 8 巻 12 号 p. 21-34

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抄録

縄文時代においてオオツタノハガイ製貝輪は,素材とされた貝の生息場所がわが国においてかなり限定されていることからその特殊性が注目され,素材入手先と素材・製品の流通経路を明らかにできる可能性の高い研究材料として,他の貝種の貝輪とは一線を画すかたちで扱われてきた。しかし,生物学においても現生貝の分布が著しく限定される特殊な貝種であることに変わりはなく,現生標本の数が少ないことも手伝ってこの貝種そのものの研究が立ち遅れていることから,考古学にとっては生物学的な情報が得にくい障害の多い研究材料でもある。そこで,従来型の考古資料のみからの研究方法では,この問題の本質にせまることが難しいと考えた筆者は,現生貝の調査データを基礎とした生物学的な視点からの研究を試み,オオツタノハガイの生息地問題・素材貝の入手方法・製作過程の一部を明らかにした(忍澤・戸谷2001)。
一方,現在までのところ東日本で唯一,オオツタノハガイ製貝輪の未製品が出土しているとされる東京都大島町下高洞遺跡D地区は,この貝をめぐる問題を考える上で最も重要な遺跡の一っと考えられるが,遺物の出土状況や遺物そのものについての詳細は未だ明らかにされていない。そこで筆者は,大島町にわずかに残されている貝層サンプルに目を通し,この中から当該遺物を検出するとともに,細部にわたる観察をおこないこの貝種の貝輪製作方法とオオツタノハガイをめぐる伊豆諸島,特に大島下高洞遺跡の役割について改めて考察を試みた。

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