新潟市民病院医誌
Online ISSN : 2759-7512
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膵インスリノーマに対する選択的動脈内刺激薬注入試験の意義
森下 健大﨑 暁彦河久 順志花野 薫堀 洲晟福島 直弥大脇 崇史安住 里映田覚 健一佐藤 宗広和栗 暢生橋立 英樹堅田 朋大佐藤 大輔横山 直行安藤 麻理大谷 哲也
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2024 年 45 巻 1 号 p. 25-37

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抄録
【緒言】膵インスリノーマは腫瘍径が小さいものが多く、局在診断がCTやMRIなどの通常の画像検査では困難である場合も多い。選択的動脈内刺激薬注入試験(selective arterial secretagogue injection test: SASI test)は、画像描出が難しい腫瘍の局在診断に有効である。当科では術前検査として積極的にSASI testを施行しており、実臨床での有用性をインスリノーマの臨床像と合わせて検討する。【方法】2009年から2023年の間に当科でSASI testを施行した膵インスリノーマ5例を対象として、患者背景、臨床所見、画像検査所見、病理所見、SASI testについて後方視的に解析した。【結果】5例のうち、体外式腹部超音波検査(US)とMRI検査ではいずれの病変も指摘できなかった。ただし、腹部USは検査施行率が低く(20%)、MRI検査は造影例が1例のみであった。造影CTは全例に施行されたが、腫瘍検出率は40%(5例中2例)であった。検出できなかった腫瘍はいずれも1.5cm以下の腫瘍であった。血管造影検査はSASI testに付随する検査であり、全例に施行、全例で腫瘍濃染が指摘され、腫瘍検出率の高い(100%、5例中5 例)検査であった。SASI testは全例で陽性動脈が指摘可能であった。【考察】SASI testでは、全例で陽性動脈を確認でき、確定診断、局在診断を同時に行える有用な検査であった。さらにSASI testの陰性領域は温存可能領域との判断を可能とする意味でも有用と考えられ、SASI testは積極的に行うべき検査と考える。
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