抄録
糖尿病性ケトアシドーシスの治療では、インスリンと同時にカリウムの投与を開始することが標準的な治療とされているが、この方法では治療経過中に低カリウム血症をきたすことが少なくない。今回インスリンに先行してカリウム投与を開始し、低カリウム血症をきたさず治療に成功した2例を報告する。症例1 :5歳、女児。多飲多尿、意識障害のため救急搬送され、1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスと診断した。静脈血pH 6.983、血清カリウム 4.4mmol/Lであったが、インスリン投与に先行して細胞外液とカリウムを投与した。経過中低カリウム血症を来すことはなかった。症例2:5歳、男児。意識障害のため救急搬送され、1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスと診断した。静脈血pH 6.945、血清カリウム 4.2mmol/Lであった。細胞外液投与とカリウム補充の後にインスリン投与を開始し、低カリウム血症を生じずに経過した。高度なアシドーシスを示す症例では、血清カリウム濃度が基準値内の場合でもインスリン投与に先行してカリウムを補充することが低カリウム血症の回避に有用である可能性がある。