わが国の介護保険制度は2000年に一気に家族介護を社会化へと舵を切った。今回、概ね四半世紀経過した現状で、性別、年齢階級別に必要な知識がどの程度定着しているかを検証し、介護保険制度の質の向上に寄与する情報を得ることを目的とした。
研究デザインは断面調査で、Web調査会社の全国モニターシステムを利用して総計1,008人の無記名のアンケート調査を行った。調査内容は基本情報と18の知識度確認質問および自由記載とした。量的解析はロジスティックス回帰分析、および分散分析を行った。質的解析はKH Coderの共起ネットワーク分析(CONA)で介護保険の運用に係わる各種意見の文脈を明らかにした。この結果、年代ならびに親との同居の場合のスコアが高度に有意で高く、自治体広報、インターネット(IN)の利用がスコアを上げていた。また20歳代、50歳代、60-64歳で女性のスコアが有意に高かった。情報媒体は性別、年齢階級別に主因と交互作用が大きく異なり、特に50歳代、60-64歳では、女性がINや書籍から情報収集していることが示された。CONAでは情報媒体の重要性と介護保険の仕組みの周知を訴える文脈が強く表れた。加えて、政令指定都市の広報由来と他の資料由来の質問との比較では前者の正答率が高く高度に有意なことから、自治体広報内容の充実拡大が介護保険の知識度の改善に有効と判断された。