2023 年 22 巻 3 号 p. 91-101
背景と目的:本研究は、COVID-19治療病院に勤務する看護職が自ら受けた差別・感謝・激励の実態を明らかにし、危機が再来した場合の危機管理体制の要点を探ることを目的とした。
方法:対象は関東以東の20急性期病院勤務の看護職で、無記名で選択肢形式と自由記載形式の質問がをした。解析は二項ロジスティック回帰分析(bLRA)と自由記載の共起ネットワーク分析(CONA)を行った。
結果及び考察:3,116名を対象とした。bLRAでは30歳代(OR = 2.03、p< 0.05)、呼吸器関連病棟配置(OR = 2.24、p< 0.05)、及びCOVID-19患者の看護経験あり(OR = 1.86、p< 0.05)であり、看護職がこれらの条件にあると2倍前後差別を受け易かった。またCONAでは患者からは感謝・激励が大多数であるが、勤務病棟に関連して医師やスタッフからの心無い差別が多発していた。一方、院外では勤務する病院そのものが社会的スティグマの対象になる違いが見られた。特に、保育所・幼稚園で各種の差別が頻発したが、一方、小中学校では校舎のガラス窓に感謝・激励・檄文が張られる等の真逆な反応が多かった。学校では日頃いじめ対策に関心が高い教育現場の姿勢が反映されていると考えられた。
結論:今回の経験と分析に基づき、危機の再来時には病院内での組織的対応、そして保育所、幼稚園に関連した行政対応が必須である。