2000 年 2000 巻 9 号 p. 591-603
物質科学研究の究極の目的の一つは,1個の分子を機械装置として作動させる「分子機械」の開発であろう。著者らは最近,分子機械の一つである「光動力キラル分子モーター」を世界で初めて開発した。その分子モーターでは,特異なキラルオレフィンのシス-トランス光異性化を回転の動力源とし,「ツメ歯車効果」とモーター分子のキラリティーを生かして,単一方向の連続回転を実現している。本報ではキラルオレフィンの化学に関する著者らの研究をまとめるとともに,「ツメ歯車効果」として有効な熱異性化反応について報告する。また分子モーターの回転機構と立体化学を概説する。
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