アカマツ樹皮リグニンの諸性質を研究した。
アカマツ外皮からフェノール酸, ジオキサンリグニン, 塩酸リグニン( 以下この三者を外皮リグニン物質と称する) をこの順序に分離した。フェノール酸は褐色粉末で,フロバタンニン様諸性質を具備し,Wiesner呈色反応は陰性。希アルカリ, アセトン, ジオキサン, 酢酸エチル等に易溶。水にも可溶。ジオキサンリグニンは黄白色粉末でWiesner呈色反応陰性, ジオキサン, アセトン, エタノール, 酢酸エチル等に可溶。アカマツの辺材, 内皮, 外皮事よび外皮リグニン物質のメトキシ含有量を測定し,樹皮リグニンとくにフェノール酸は木材リグニンにくらベメトキシが少ないことを知った。外皮リグニン物質の元素分析値は,C60~63%,H4.8~5.8%でアカマツ材リグニンと,とくに著しい差を認めない。外皮リグニン物質をメチル化し,活性基の量を測定したところ,これらとくにフェノール酸は多量のフェノール性OHをもっていた。アカマツ辺材,内皮,外皮,外皮リグニン物質をニトロベンゼン酸化し,酸化生成物中のアルデヒド成分をペーパークロマトグラフィーで検出した。内皮, 外皮, フェノール酸分解物中にプロトカテキュアルデヒドが多く存し, この点, 材リグニンと著しく異なっていた。
針葉樹と広葉樹の樹皮リグニンの構成基本物質を比較した。
針葉樹(4種),広葉樹(4種)の樹皮を処理して抽出物を十分除き,ニトロベンゼン酸化に付し,酸化生成物を検した。針葉樹樹皮リグニンはグアヤシル型,p-オキシフェニル型,3,4-ジオキシフェニル型の構成基本物質をもち,シリンギル型基本物質は含まないか, あるいはきわめて僅かしか含まず, 広葉樹樹皮リグニンはシリンギル型, グアヤシル型,p-オキシフェニル型,3,4-ジオキシフェニル型基本物質を含んでいることが認められた。