工業化学雑誌
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オレイン酸および混合脂肪酸の氷酢酸法オゾン分解による非アゼライン酸部成分
和泉 学
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1959 年 62 巻 6 号 p. 814-817

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抄録
アゼライン酸の需要は最近急激に増加してきているが,その製造方法はオレイン酸などの不飽和脂肪酸をオゾン分解する方法が現在最も有利とされている。しかし,この方法によれば,アゼライン酸と同時に必然的に相当量の非アゼライン酸部が副生する。この非アゼライン酸部の中でさし当り利用し易いと思われるものは,分子裂断の結果生じた低級一塩基酸類であろう。著者がさきに報告した氷酢酸法オゾン分解の工程にしたがえば, この低級一塩基酸は石油エーテルまたはヘキサンによる抽出部に含まれると考えられる。一方,オゾン化および分解においては,多くの副反応を伴なうものである上に,分解後の溶媒留去の操作においては,生成物の一部が溶媒と一緒に留出することは避け難く,氷酢酸法オゾン分解によって実際にえられる低級一塩基酸の種類ならびに量は不明であった。本報告はオレイン酸,米ヌカ油脂肪酸およびトール油脂肪酸から,氷酢酸法オゾン分解によってえられた非アゼライン酸部について,ガスクロマトグラフ定量分析を行い,おもに低級脂肪酸の存在を追求したものである。その結果,著者の場合と類似の条件で行われた従来の実験結果から当然生成を予測され,またすでに著者がペーパークロマトグラフ分析によって検出確認したペラルゴン酸のほかに,いずれの試料についても同様な種類の相当量の低級脂肪酸が生成している薪らしい事実を認め,Rt値からこれをカプリル酸であるとした。捕集されたものについて求めたその生成量は,いずれの場合にも,ペラルゴン酸の約1/5であった。カプリル酸の生成は副生したオレイン酸ヒドロペルオキシドの裂断の結果であると考えた。
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