63 巻 (1960) 9 号 p. 1516-1520
ポリエチレンテレフタレート繊維の温度上昇および下降時の力学的性質を動的および静的な方法を併用して検討した。未延伸試料では温度上昇たより静的な張力の急速な減少がみられ,70℃付近より動的弾性率の急激な低下,動的損失の増大がみられた。温度下降時には張力以外大きな履歴を示さなかった。3倍延伸繊維では熱処理の有無にかかわらず単調な張力低下を示した。温度下降時には120℃ 付近に変曲点が存在した。動的弾性率は延伸度,熱処理,温度の上昇,下降により若干差があるが110℃付近より減少が急激であった。動的損失も同様に130~140℃ 付近で極大値を示した。3.72倍延伸熱処理繊維では張力の極大,極小が動的損失の極大,極小温度に対応して現われた。未処理繊維では極大点が明確でなかった。温度下降時の張力は単調に減少し, エントロピー的寄与がある。高温分散のtanδの極大値は未延伸, 3 倍延伸未処理,熱処理,3.72倍延伸未処理,熱処理と順次減少を示した。3.72倍延伸,熱処理試料についての応力緩和挙動は前記の実験結果と対応した。また応力緩和とtanδの減少は類似の傾向を示したが,動的弾性率は徐々に増加した。これらの一連の現象を二重網状構造によって説明した。高度延伸, 熱処理は有効な二重組織を形成するものであることを認めた。