工業化学雑誌
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強塩基性基と弱酸性基とを有する均一両性イオン交換膜
西村 正人高須 皓次杉原 瑞穂
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1961 年 64 巻 3 号 p. 587-590

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抄録

N-メチル2-ビニル5-エチルピリジニウム塩とメタクリル酸とを膜状で,均一に共重合させることによって,同一膜中に強塩基性の第4級アンモニウム基と弱酸性のカルボキシル基とを有する均一両性イオン交換膜を合成した。そして,膜中の両性基の共存割合と弱酸性基の解離状態を種々変化させることによって,両性膜の電気化学的性質が,如何に変化するかについて検討した。その結果,両性膜は,(a)弱酸性基がほとんど解離していない場合には,0.1N/0.2N-KCl溶液中では,ほとんど理想に近い陰イオン選択透過性を示すが,(b)弱酸性基が完全に解離した状態では,膜中の弱酸性基の割合が多ぐなるにつれて,両性膜は陰イオン選択透過性から,陽イオン選択透過性へと変化する。その中間の組成の膜では,両性基の相互作用によって,イオン選択透過性は小さく,Donnan吸着量は非常に大きい。ある組成の両性膜では,膜中の弱酸性基の解離状態を変化させることによって,可逆的に,膜のイオン選択透過性を変化させることができる。両性膜の1N-KCl溶液中での比抵抗は,(a),(b)いずれの場合も,ある組成で,著しく大きな値を示すことから,膜中の両性基間で,イオン中和が起っているものと考えられる。

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