69 巻 (1966) 5 号 p. 1053-1056
メタクリル酸β-フェネチルがシンジオタクチック生長をしやすい原因を解明するため, メタクリル酸メチル, メタクリル酸ベンジルとともに30 ℃ ないし175℃ の範囲でトルエン中アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として重合させ, 得られたポリマーの立体規則性の重合温度依存性をそのN M R のα-メチルシグナルから比較した。ただしこの易合s-triad のみを三角形に近似して定量し, かつ立体規則性の未端規制を仮定して, Bovey の式〓にあてはめてアイソタクチック生長( 確率σ ) とシンジオタクチック生長( 確率1-σ ) の活性化エントロピーの差ΔS1〓-ΔSs 〓と活性化エンタルピーの差ΔHI〓-ΔHs 〓を計算した。その結果モノマー 〓を得た。活性化エントロピーの差に差異を認め難く, いずれの場合もほとんど零であるが, 活性化エンタルピーの差はメタクリル酸β-フェネチルの場合に他の二種のモノマーに比べて大きいことがわかった。このことからメタクリル酸β-フェネチルの場合にはβ-フェネチル鎖の都合よい長さによってポリマー末端ラジカルとモノマーの両側でエステルカルボニルの分極がとくに大きく,シンジオタクチック生長しやすいと考えられる。