73 巻 (1970) 7 号 p. 1433-1438
リン酸セルロース (反応型試料) とリン酸二水素アンモニウム添加セルロース (添加型試料) の熱分解反応を動力学的に比較検討し, リン酸基の結合様式と分解反応との関係について考察を加えた。まず, 熱重量曲線の各種動力学的解析法の本試料への適合性を検討したが, 両試料とも二つ以上の分解反応が重なるため, その分離解析には小沢の方法を用い, さらに Doyle の補正を加えることが最も適当な方法であることを明らかにした。また, この方法によって両試料の分解反応を解析した結果では, 反応型試料の分解は全て2段階で, 添加型試料の分解反応はリン含有率の低いときには2段階で, また高いときには3段階で進むことを認めた。両試料の活性化エネルギーに大差のあることから分解の反応機構が異なることを予想した。反応型試料の分解の主反応である第2段階反応は残存重量 90~50% の間で起り, 活性化エネルギー, および頻度因子はリン含有率にかかわらず一定であるが, 反応次数 n2がリン含有率とともに増加する傾向はリン含有率につれて分解速度が遅くなることであり, 炭化残さ層を通しての揮発性物質の逃散速度がおそくなることを意味すると考えられる。この考察はリン含有率の異なる試料の第2段階での分解残さの顕微鏡写真によってよく実証できる。