81 巻 (1960) 9 号 p. 1361-1365
ベンゼンまたはナフタリンのような微弱な溶液螢光をも測定し得る螢光分光光度計を試作して,ナフタリンー置換体の螢光スペクトルを測定し,またこれらの量子収率,螢光遷移確率,無輻射遷移確率を求めた。これらの量と置換基との関係を考察してつぎの結果を得た。a)螢光スペクトルを求めると約1200cm-1の振動レべルが観測された。これはナフタリン核の全対称振動によるものと考えられる。b)ナフタリン核に-E効果の置換基(メチル,オキシ,アミノ基)が置換された場合には,この効果が増加するほど螢光遷移確率は増加するが無輻射遷移確率はほとんど変化がない。ナフタリン核および置換基のエネルギー準位図についての考察の結果,この種の置換体の螢光はナフタリンの螢光と本質的には同じ性質のものであり,したがって無輻射遷移はおもにナフタリン核の励起状態の性質に支配されるため置換基による影響が小さいと説明された。c)ナフタリン核にアセチル,ニトロ基の置換された場合には,無輻射遷移確率は非常に大きい値を示す。b)におけると同様な考察を行なった結果,この種の置換体では無輻射遷移はナフタリン核の励起状態よりも置換基の励起状態におもに支配されるため,b)の場合と異なり置換基による影響が大きいのであると説明された。d)螢光遷移確率および無輻射遷移確率から計算されたナフタリンー置換体の螢光寿命と置換基との関係は,すでに実測されたリン光寿命と置換基との関係と平行関係を示すことが見いだされた。