82 巻 (1961) 9 号 p. 1182-1186
可視吸収スペクトルの測定と酸化還元電位とを考察して,各種原子価のルテニウムの溶存条件を検討するとともに,それら化学種の水酸化鉄(III)沈殿との共沈を検討した。臭素水あるいは塩素水のような酸化剤を過剰に含む溶液では,溶液の酸化還元電位は水素イオン濃度の増大とともに上昇するのに反し, RuO42-, RuO4- および RuO4 の相互間の電位は理論的には水素イオン濃度に依存しないと考えられることから,酸性側では RuO4 が,弱塩基性側では RuO4- が,さらに強塩基性の溶液では RuO42- がおもな化学種となることを推定し,吸収スペクトルとの対比においてこれを実証した。水酸化鉄(III)への共沈を検討した結果, Ru8+ および Ru4+ が pH 7 近傍でほぼ 100% 共沈するが, RuO42+, RuO4- べおよび RuO4 はまったく共沈しないことが明らかとなった。なお,レニウムとテクネチウムもそれぞれ 7 価の状態では共沈しない。