85 巻 (1964) 10 号 p. 603-606,A49
ポリ-γ-ベンジル-L-グルタメ-ト(PBLG)の二塩化エチレン(EDC)溶液に種々の酸を添加したときの電気複屈折の変化をク形波パルス法により測定した。強い酸(トリフルオロ酢酸,トリクロル酢酸,ジクロル酢酸,モノクロル酢酸,塩化水素)を少量添加すると比Kerr定数はいちじるしく減少し,減少の程度は加えた酸の強度と密接な関係にあることを見いだした。他方,ギ酸,酢酸,プロピオン酸などの弱い酸では比Kerr定数のいちじるしい低下は見られなかった。これらの現象は,PBLG分子の電気的性質が強い"酸"の存在で大きく変化することを示してわり,ヘリックス状のPBLG分子のC末端のペプチド基がプロトン化されることにより見かけの双極子モ-メントが減少するという考えを裏づけている。
また,PBLGのEDC-ジクロル酢酸(DCA)混合溶媒溶液の比伝導度の溶媒組成による変化を測定した。ηo(κ-κo)/6は少量のDCAの添加で急に増大し,さらにヘリックスからコイルへの転移が起るDCA70~80vol%付近でふたたび増大することを見いだした。これはDCAに対しPBLGが塩基(プロトン受体)として働いていることを示しており,この点からもペプチド基のプロトン化の考えが支持された。