88 巻 (1967) 4 号 p. 400-403
酸性水酸基をもつ化合物とシアノコパルト(II)錯体が共存する水溶液中で,ブタジエンが水素ガスを導入しなくても水素化されブテン異性体を生成することを見いだした。硫酸水素カリウム,炭酸水素カリウム,リン酸二水素カリウム,ホウ酸,フェノール,クエン酸,フタル酸などが水素化試薬として有効であり,このような化合物が共存しないと水素化反応はほとんど起らないかあるいはその速度はいちじるしく小さい。生成したプテン異性体間の異性化反応は認められず,その分布は溶液中のシアン,コバルト,酸性水酸基をもつ化合物の量ならびに溶液のpHに依存した。酸性水酸基の酸素が2価コパルトイオンに配位し,コバルトから水酸基の酸素に電子移行が起ることにより水酸基の水素原子が離脱すると考え,水素化の選択性について可能な機構を議論した。