89 巻 (1968) 4 号 p. 383-387
寒天水溶液ゲルのゲル化の機構を調べることを主目的として,尿素を添加した寒天ゲル試料について,鎖式応力緩和計を用いて応力緩和実験を行なった。寒天濃度3.35~5wt%のゲルに5mol/lの濃度まで尿素を添加した試料ゲルについて,約25~65℃の温度範囲にわたり応力緩和曲線を求めた。結果を3個のMaxwell模型を並列にした力学模型で解析し,考察を行なった。
寒天ゲルの主要三次元構造に対応する弾性定数E1は,尿素添加量の増加につれて急激に滅少し,5mol/lの添加でゲル形成能は事実上0になる。滅少の割合は寒天濃度と尿索濃度の相対的比率に依存することが少なく,水溶液中の尿素濃度それ自身の値によって主として支配される。同じく主要構造に対応する最長緩和時間t1も添加尿素濃度の増大につれて小さくなるが,その減少の仕方は易の場合より若干緩慢である。τ1の温度変化から求めた見かけの活性化Dネルギーは,寒天濃度,尿素濃度および寒天分子量の異なる全試料ゲルについてあまり差がなく,その平均は約5kca1/molであり,これは尿素を添加しない場合に近い値である。
以上の点から,尿素添加によるゲル形成能の低下の主要因は,尿素を添加することにより水の会合によってできているcluster造が破壊され,単分子の状態の水分子の比率が増大し,溶媒の水の活動度が変化し,寒天ゲルのゲル形成能を支配する主要因とみられる寒天分子鎖内の溶解性と非溶解性の均衡が溶解性の方向へ移動することであるとみられる。