89 巻 (1968) 8 号 p. 789-794
アダマンタンのラジカルハロゲン化の生成物比を報告し, 1-ラジカルの生成段階における「正常」な挙動と, そのハロゲン引き抜き段階における「異常」な挙動とについて機構的説明を行なった。
ラジカルハロゲン化は, 塩化アセチル, N-ブロムスクシンイミド, N-クロルスクシンイミド, 塩化スルフリル, クロロホルム, 四塩化炭素を用い, クロルベンゼン, ベンゼソ, 四塩化炭素, クロロホルム中で, 光照射またはラジカル開始剤存在下熱反応により行なった。
1-アダマンチルラジカルの異常に低い選択性 (Br2-CCI14, BrCCI3 などの系における競争ハロゲン化より) は, 1-アダマンチルの非平面橋頭構造ゆえに再混成安定化がないことによる不安定性を反映している。1-ハロアダマンタンと2-ハロアダマンタンの比率は通常のハロゲン化試薬で H あたり 3~5 となり, 1-ラジカル生成が2-ラジカル生成に優先することを反映し, したがって非平面ラジカルが平面ラジカルと非常に類似した遷移状態で生成することを示す。このことから, 著者らは一般に水素引き抜きのさいフリーラジカルが sp3- ようの構造の遷移状態で生成し, そののち再混成安定化されるという仮説を提出する。