91 巻 (1970) 1 号 p. 1-11
1,3-メタノインダン(2),ベンゾノルボルネン(4),1,4-エタノ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(5) 系の種々の誘導体を合成した。このうち,(2) は現在までに知られた最小環の橋環状ペンゾシクレンで,著者らによって最初に合成されたものである。これらの化合物のカルボニウムイオン反応におけるアリール関与の重要性の表示と,本質の解明がなされた。
anti-9-ペンゾノルボルネニルブロシラートの加溶媒分解速度は,ペンゼン環上の置換基により大きい影響をうける。この澱擁蓋効果は,アリール関与の存在を明瞭に証明する。さらに,6,7-ジメトキシ-anti-9-ペンゾノルボルネニルブロシラートの加藩擦分解における置換基効果の累積性によって,遷移状態の対称性,したがって中間体カルボニウムイオンの対称構造に対する証拠が与えられた。1,3-メタノインダン-exo-2-イルトシラート,anti-9-ベンゾノルボルネニルトシラート,exo-10-ベンゾピシタロ(3.2.1)オクテニルトシラートの加溶媒分解の比速度は32:1:0.OO26であって,反応点の角のひずみから予想される順序とは逆であった。したがって,これらの系では,ベンゼン環の関与の方が角のひずみより重要であることを示峻し,この結果はカルボニウムイオンとベンゼン環のπ 電子のMOの重なり積分の計算結果と定性的に一致する。
exo-2-ペンゾノルボルネニルプロシシラートの加溶媒分解はホモペンジル共役を示す。すなわち,ホモパラ位にある電子供給基はカルボニウムイオンに共鳴安定化をもたらすが,ホモメタ位のそれはそうでない。ベンゼン環が関与するときの反応生戒物,exo-2-アルコールの誘導体のみである。強力な電子吸引性の6,7-ジニトロ置換のexo-2-ベンゾノルボルネニルプロシラーでは,速度の減少とともに生成物の立体特異性がなくなり,exo-2-アルコールの誘導体以外に,オレフィンとendo-2-アルコールの誘導体が得られる。このendo体は,溶媒とのSN2反応の結果であることが証明された。
β-(syn-9-ベンゾノルボルネニル)エチルプロシラートの加溶媒分解は遠隔アリール関与をあらわした。