91 巻 (1970) 10 号 p. 957-961
非ブロトン性溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)中におけるBHC異性体(α,β,γ およびδ)の電極反応を直流ポーラログラフィー,交流ボーラログラフィー,定電位電解法およびサイクリックボルタメトリーにより検討した。BHC各異性体はDMF溶媒中で安定であり,0.1mol/l過塩素酸テトラエチルアンモニウムを含むDMF中滴下水銀電極で拡散律速の非可逆還元波を示す。定電位電解法によりBHCは水銀電極でその全還元過程がC6H6Cl6 + 6e=C6H6 + 6Cl-で表わされることを確かめた。還元半波電位E1/2はγ>>α>β≈δの順に正に移行する。また透過係数と活性化過程における電子数との積砺鞠はβ>>α≈δ>γの順に大きくなる。交流波の挙動を非可逆波の理論によって解析した結果,γ-,α-およびβ-体については理論と実験のほぼ満足すぺき一致を得たが,δ-体はかなり異なる挙動を示した。α-,β-およびγ-異性体について,直流半波電位の差異からButler式に基づいて推定した活性化エネルギーの差は,各異性体の立体配座による自由エネルギー差のみでは説明されず,これは活性化状態においても異性体間で大きなボテンシャルエネルギー差があることによると思われる。