後で述べるように,スクレリンは大阪市立大学理学部の里村幸男教授により発見された特異の生物成長調節作用をもつ物質であるが,著者らはこの物質の化学構造の解明を分担することになり, 1964, 5年頃からこの仕事に参加,爾来10年近くこれに関連した仕事をほそぼそとつづけてきた。この度日本化学雑誌の刊行停止にともない総合論文がなくなるということなので,この最後の機会に,この関係の仕事をまとめ貴重な紙面を汚させていただくこととした。
この研究は,まことにささやかなものであり,誇るような結果も得られていないが,「生物活性主成分の単離→構造決定→合成→副成分の単離,構造決定,合成→系列化合物の合成→生合成過程→生理作用→研究中に発見された反応および物質の研究」という一セットの研究が包含されており,これは1960年代の天然有機化各物研究の典型的なパターンを示すものとして,小さな記念塔的な意味はもっているように思う。
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