日本化學雜誌
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N-ニトレンに関する最近の研究
坂井 紘司田中 昭古賀 元J.-P. Anselme
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1971 年 92 巻 12 号 p. 1065-1075

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抄録

N-ニトレンを反応中間体とする反応に関する研究は,この10年間に急速に進歩し, N-ニトレンを生成させる方法としては,すでにいくつかの方法が確立されているが,著者らは, N-ニトレンが関与するものと理解されている諸反応についてもっと深い知見を得るために,適当な化合物を原料として,なるべく余計な試薬を使わないでなるべくおだやかな条件でN-ニトレンを生成させる方法について研究を進めた。この目的のために, 1, 1-ジベンジルヒドラジンおよびそのアニオンと窒化トシルとの反応を詳細に検討し,この反応がN-アジドを経由してN-ニトレンを生成し,既知のN-ニトレンを中間体とする反応を容易に起こすことを確かめた。またN-ニトロソジベンジルアミンおよびN-スルフィニルヒドラジンがベンタカルボニル鉄と反応して容易にN-ニトレンを生成することを明らかにし,これらのN-ニトレンが関与する反応の機構について考察を加えた。
ニトレン窒素が複素芳香環窒素に結合したN-ニトレンを加熱すると,窒素ガスを放出して分解するが,ある種の複素芳香環N-ニレンは窒素の脱離による第一次の分解と同時に,複素環内の室素原子の向う側にある“背骨結合”(backbone bond)が開裂して,もっと小さい断片への分断反応(fragmentation)が起こることがある。この種の分断反応がどんな複素環についてどんな条件のもとに起こるかを検討し,分断反応が起こる原因を,開裂に関与する化学結合の本質に基づいて考察した。

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© The Chemical Society of Japan
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