日本化學雜誌
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高圧下における硫酸カルシウム水溶液の電気伝導度
稲田 悦子清水 澄大杉 治郎
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1971 年 92 巻 12 号 p. 1096-1101

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抄録

2-2型電解質である硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの水溶液について,圧力1200kg/cm2まで,温度15, 25, 40°C,濃度1×10-4~10×10-4mol/lの条件で電気伝導度を測定した。各圧力下での当量伝導度Λは√Cに対して,Kohlrauschの直線関係を満足した。この直線を外挿して得られた無限希釈での当量伝導度Λ0は,圧力に対して極大値をもった。このときの圧力は,水の粘度が極小値を示すときの圧力よりも,やや高圧側に位置していることがわかった。Robinson-Stokesの方法によって求められたCa2+, Mg2+, SO42-イオンの水和数は,圧力および温度によってほとんど変化を示さなかった。イオン対, Ca2+・SO42-, Mg2+・ SO42-の解離は圧力によって促進され,温度によっては妨げられた。これらの関係から,イオン対の解離にともなうΔ〓0, Δ〓0, Δ〓0, Δ〓0を求めた。さらに伝導度によって決められた平衡定数KをFuossの理論式に代入して,イオン対最近接距離aを求めた。イオン対の最近接距離が結晶半径の和より大きいことと,得られたΔ〓の値が小さいことから,イオン対は水分子がイオンの間に介在しているものと考えられた。aは温度の上昇とともに減少したので,イオン対は熱運動が高まるにつれ,次第にイオンの間に水分子をもたないイオン対に近づくという結論を得た。

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