日本化學雜誌
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アコペンタアンミンコバルト(III)錯塩によるビニル単量体の重合
竹村 富久男松山 礼子森 克恵永井 丸子
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1971 年 92 巻 12 号 p. 1102-1107

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抄録

アコペンタアンミンコバルト(III)錯塩を開始・増感剤として,アクリロニトリル水溶液の熱重合(60°C)とアクリルアミド水溶液の光重合(30°C)を行ない,その重合開始機構を検討した。アクリロニトリルの熱重合速度は酸性領域でpHとともに増大し,錯塩濃度のほぽ0.5次に,単量体濃度の一次に比例する。また重合速度はイオン強度の増大とともに減少し,いわゆる塩効果を受ける。これは重合開始ラジカルの生成が異符号のイオン間の反応によって起こっていることを示す。錯塩の対アニオンの影響も認められ,重合開始にはイオン対よりも遊離の錯イオンの方が役割の大きいことがわかる。つぎにアクリルアミド水溶液の光重合では,470nm以上のd-d吸収帯に相当する可視光によっても重合は開始され, Delzenneの報告と異なることがわかった。重合速度は光源強度および錯塩濃度の変化にともなう吸収光量に関してほぼ0.5次,単量体濃度に関して1.7次であるが,イオン強度の影響はほとんど受けない。したがって重合開始は励起錯イオンと中性分子のアクリルアミドとの反応であり,これによってできる単量体ラジカルが生長を開始するものと考えられる。なお錯イオンによる生長ラジカルの停止反応は認められない。

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