日本化學雜誌
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三員環化合物の核磁気共鳴スペクトルの研究
植山 真佐子通 和夫
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1971 年 92 巻 9 号 p. 741-758

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抄録

三員環化合物の核磁気共嗚スペクトルが示す諸種の性質を系統的に提示し,説明するために,シクロブロパン,オキシラン,アジリジン,チイラン,チイラン-1-オキシド,チイラン-1,1-ジオキシド,およびこりらの誘導体のスペクトルを測定し簡単な化合物については,13C-Hサテライトスペクトルを含めて,スペクトルの完全解析を行なった。得られた結果を系統的に整理し,環水素の化学シフトおよびそれに対する種々の溶媒効果,とくに,ベンゼンシフトと水素結合効果,三員環の遠隔遮蔽効果の磁気異方性,13C-Hスビン結合定数およびそれに対する種々の型の1H1Hスビン結合定数に対する三員環中の異種原子または諸種の置換基の影響などについて考察した。三員環中にイオウ原子を含む化合物では,種々な点において異常性が見いだされた。また, 2-(1-ナフチル)アジリジン-15Nのスペクトルから,15N,1Hスビン結合の立体特異性が発見され,窒素原子上の孤立電子対の方向と関係づけて議論した。最後に,ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)およびトリス(2, 2, 6, 6-テトラメチルヘプタン-3, 5-ジオナト)ユ-ロピウム(III)を用いて,オキシラン, N-‚チイランの各2-(2-ナフチル)置換体,およびチイラン-1-オキシドのスペクトル中に観測される常磁性シフトについて検討した。本研究で取り扱った種々の三員環化合物の核磁気共嗚スペクトルはすべての点において,三員環であるために特徴を示していることが明らかとなった。

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© The Chemical Society of Japan
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