水晶の水熱育成は普通75~85%の高充てん率下で温度差法により行なわれている。溶液の充てん率が低くなると成長率が小さくなり,充てん率40%以下では成長は見られず種子結晶が溶解する。そこでこれまでとは反対に,オートクレープの高温部分に種子結晶を,低温部分に原料を配置する水熱逆温度差法により水晶を成長させる実験を行なった。NaOHおよびNa2CO3溶液を用い,充てん率10~40%で水晶を成長させることができた。しかし雑晶が非常に発生しやすく,温度差が大きいとオートクレープ壁種子枠なとが雑晶で一面におおおれるほどであるので,数℃ 以下の小さな温度差で育成を行なう必要がある。成長速度は30%と40%でほとんど同じであり,20%で約1/2となり,10%ではきわめて小さかった。充てん率の成長速度に対する依存性は両溶液で同じ傾向を示した。Z,X,Rおよびr面の相対成長速度は,Z>X>r>Rであった。鋸歯状を示すZ面に「す(鬆)」が観察されたが,R,rおよびX方向の成長には「す」がなく,透明であった。